定量挤

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【黒】



「黒崎くんの色って沢山あるよね」

井上の突拍子もない言葉には多少、慣れたつもりではいたが、やはり何の脈絡もなく言われると呆けた表情になってしまうのは仕方がないことだろう。

確か俺達は久しぶりに休みが重なり、ゆっくりしつつ、夕飯は何にしようか。と話している最中だったはず。

呆けている俺に構わず、井上は俺のイメージの色を並べている。

「まずオレンジでしょ。それから赤。あとは黒と青。あ、白とかピンクに紫も黒崎くんっぽいよね」

ぽいってなんだ、ぽいって。
アバウトすぎだろ。
ピンクや紫ってアレか？
遠回しにスケベだとか、エロいって言いたいのか？

(＊ピンクや紫に対する間違えた認識＊)

「オレンジはともかく、他はイメージじゃねーだろ」
「そうかな？ヒーローは赤って決まっているでしょ？」
「俺はヒーローなんかじゃねーよ」
「ううん。私にとって黒崎くんはヒーローなんです」

ちょ、なに…可愛い事を言ってんだ！
ニヤケるだろうが！！
慌てて口元を隠して「んなコトねーよ」と、少しぶっきらぼうに言っておく。
そんな俺を見て井上はクスクスと笑う。

「あーでもよ。そんなに色があったら、結局は黒になるんじゃねぇの？」

そう言うと井上はキョトンとして「あ、そっか」と手を叩く。

「黒崎くんだから黒にかかっているんだね。さすがぁ」
「いやいや。意味わかんねぇし」

流石、井上ブレイン。
常人にはわからない所に直結しているらしい。

「私は何色かなぁ」
「井上…かぁ…」

俺は腕を組んで僅かに首を傾げる。
ふわふわした感じで、明るくて、俺の知る限り女の子らしい女の子。一見、頼りなさ気に見えても、芯はしっかりしている。

チラッと見ると、井上は俺の言葉を待っている表情だ。

「パッとイメージがわかねぇなぁ」
「えぇ～。そんなに個性ないかなぁ」
「いやいや。個性ありまくりだろ」
「え？そう？」

えへへ。と笑うが、なぜそこで照れ笑いする？

「ぶっちゃけ、お前も色がありすぎて決まらないよ」

白、桜色、胡桃色…
世の中にある綺麗な色、全てが井上のイメージ。
なんて、こんな事、口が裂けても言えないけどな。

「じゃぁ私も黒崎くん色だね」
「は？」
「だって混ぜたら黒だもん」

満面の笑みを浮かべる井上。
あぁ、なんだってコイツはこんなに可愛いことを言ってくれるんだ。

まぁ何れ、『黒崎』くん色になって貰うつもりではいるけど…
とりあえずはまだ学生なので、暫くはオレンジ色と胡桃色のままで。
もう少し待っててくれよ、織姫。


--end--

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